準備での使用
撮影の準備段階で、リファレンスとして映像や写真作品を使って作品の方向性を提示しているのをよく見かけます。企画とマッチしていて、非常に分かりやすい時もありますが、なぜこのリファレンスなのだろう?と疑問に思うこともあります。
作品のテーマや方向性とは異なるイメージのリファレンスを提示されたスタッフは、そのリファレンスを見て、どのように考えるでしょうか。ある部分は相応しいし、注釈付きで見れば分からないこともない。初めは自分なりに解釈して、いくつかの選択肢を持って準備をするでしょう。では、何度も異なる方向性のリファレンスを提示されればどうでしょう?おそらくスタッフはどうせリファレンスとは違うイメージを持った作品になるだろうから、観ても仕方がないと、せっかく提示したリファレンスを参考にしなくなるのではないでしょうか?
私はリファレンスが一概に悪いと言っているわけではありません。映像や写真の持つ情報量は言葉で表現するよりも何倍も短く済みます。スタッフが正しく方向性を共有できるのであれば、何でも使うべきだと思います。私はリファレンスでの方向性の提示に加えて、「ビジュアルイメージスケールシステムを加えて」説明することが、準備段階で作品の方向性を共有する最良の方法だと考えています。
ビジュアルイメージスケールで今回はこういうイメージを狙おう、と周りのスタッフに伝えれば、その言葉の言語イメージスケール上の位置によって、色味・明るさ・柔らかさ・素材感など多くの情報が伝えられます。リファレンスと共に方向性を正確に共有できた方が、準備もスムーズに進められます。準備がスムーズに進められれば作品のクオリティも上がると思います。
最初は、手探り状態で、かえって混乱を招くこともあるかもしれません。制限されることに抵抗を感じる方も多いかもしれません。新しいシステムを使用するときは大抵の場合そうなりますすが、慣れてくればその制限の中で自由に動き回れることに気づくはずです。そうなれば、幅の広いイメージを持った作品を量産できるようになり、とてもクリエイティブな活動を行えるようになります。ビジュアルイメージスケールシステムは自由度と汎用性が高いため、方向性を保ちながら自分のスタイルを作品に込めることができます。
新型コロナウイルスの流行により、今後は今までよりも更に予算が縮小されていくでしょう。準備から完成まで一貫して、イメージの共有ができるビジュアルイメージシステムは限られた予算を有効に使う最良のシステムだと考えています。
以下は私がイメージスケールを撮影の準備でどのように使用すればいいかを考えた例を挙げました。
イメージスケールの実践は自分の作り出したいイメージ(イメージスケール上の言葉)を決め、それにふさわしい背景を選び、その前にたつ主役を選び、衣装を選び、髪型を選びます。イメージスケールを選んだ時点で3色配色or5色配色を決めておくと、その後の選択が楽になります。
基本的には面積の多い部分が印象を決めるので、主役自体、主役の衣装・メイク・髪型、背景の色・質感・素材を丹念に選びます。先ほど決めた配色を元にそれぞれの要素となる色を決めていきます。色選びに迷ったらトーンを合わせた別色相の色を選べば大丈夫です。
実践しようと思ったら難しいのですが、スナップ写真は本当に訓練になります。
上記のことを一瞬で判断しなければならない場合が多いのと、写真を撮った後に自分で自分の撮ったものを見て、イメージスケールに当てはめることは訓練効果は絶大です。
作品作り中にどこか印象がぼやけているな、と感じたら一つ一つの要素をこのイメージスケールに当てはめて考えれば、何が問題になっているのかがわかります。




